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第5回 この作家がすごい

■美術担当中村聡さんが選ぶオススメの1枚

どの作品も思い入れがありますし、すべてがオススメなのですが、あえてひとつ選ぶとしたらこの棟方志功の作品『優婆夷の柵』でしょうか。観音様は人々を救済するために化身する33の姿のうちのひとつです。ふんわりとした優美な表情と、鮮やかな色の対比が美しいですね。

棟方志功は、1903年に青森で生まれた版画家です。ゴッホにあこがれて、画家を志すのですがなかなか芽が出ず、試行錯誤を重ねていくうちに版画と出会い、独自の作風を開拓します。その大胆な画風は日本のみならず世界中で注目され、ついにはベネチア・ビエンナーレで国際版画大賞を受賞するほどの世界的巨匠となりました。棟方は木の板に宿った生命を掘り起こすという想いを持ち、版画を『板画』と呼んでいました。この作品には、そんな想いがしっかりと表れているように思います。

ビュッフェ「幻想旅行:Cyrano regardant le systeme astral シラノはアストラルシステムを探して323」

中川一政「椿」
実はこれ、1938年、昭和13年の作品なんですよ。棟方が34歳のときのものです。作られてから70年以上も経過しているのですが、斬新だなあと思います。本当に素晴らしい作品は歴史や風格とともに、新鮮さも感じられると思うんです。そして、保存状態もとても良い。これは、作品が以前の持ち主さんにとても大切にされていたということです。この作品は今後も愛されて大切にされるのだと思います。

このほかにも、棟方志功の肉筆画も揃えています。戦中、戦後で版木が不足していたときに描いていたものなのですが、彼は肉筆画を「倭画」と呼んでいました。棟方志功の作品は、死後40年近く経っても人気が高く、値段が下がらないんです。好きという気持ちからだけでなく、資産としての価値を念頭に置いて購入される方もいらっしゃいます。

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